飛行機はどうやって飛んでいる?知られざる「ジェット燃料」の正体と未来
家族旅行や出張で乗る飛行機。あの巨大な機体を地上から数万フィートの高さまで押し上げ、時速800km以上で飛ばし続けるエネルギーの源は何なのか、考えたことはありますか?
「車と同じガソリンじゃないの?」と思われがちですが、実は全く別物。今回は、空の旅を支える「ジェット燃料」の正体から、今話題の環境に優しい次世代燃料まで、1,800文字ボリュームで徹底解説します。
1. 飛行機の燃料は「灯油」の仲間!?
結論から言うと、現代のジェット旅客機に使われている燃料の主成分は「ケロシン」です。
聞き馴染みがないかもしれませんが、実はこれ、私たちが冬場にストーブで使う「灯油」と非常に近い性質を持っています。なぜ、爆発力の強そうなガソリンではなく、灯油に近い成分が選ばれているのでしょうか? それには3つの重要な理由があります。
① 凍らないこと(低凝固点)
上空1万メートルの外気温度は、なんとマイナス50度を下回ります。ガソリンや軽油では凍結したり、ドロドロに固まってエンジンに送れなくなったりするリスクがありますが、高度に精製されたジェット燃料はマイナス47度以下にならないと凍らないよう設計されています。
② 燃えすぎない安全性(高引火点)
ガソリンは揮発性が高く、常温でも火を近づければすぐに引火します。しかし、大量の燃料を積む飛行機において、万が一の事故や燃料漏れの際にすぐ爆発してしまうのは極めて危険です。ケロシンは引火点が高く、比較的安全に扱うことができるのです。
③ エネルギー密度が高い
限られたタンク容量で長い距離を飛ぶためには、効率よくエネルギーを取り出す必要があります。ケロシンは重量あたりのエネルギー効率が非常に優れており、まさに長距離飛行のパートナーとして最適なのです。
2. 実は2種類ある?飛行機燃料の使い分け
すべての飛行機が同じ燃料を使っているわけではありません。大きく分けて2つのタイプが存在します。
ジェット機用(ジェットA-1 / JP-4など)
現在、ANAやJALなどの旅客機で主流なのがこれです。灯油に近い成分に、酸化防止剤や静電気防止剤、防氷剤などの「添加剤」を絶妙なブレンドで混ぜた、まさにハイテク燃料です。
プロペラ機用(アブガス / Avgas)
個人所有の小型機や、昔ながらのレシプロエンジン(ピストン運動で動くエンジン)を搭載した飛行機は、「アブガス(航空ガソリン)」を使用します。こちらは自動車用ガソリンに近い性質ですが、オクタン価が非常に高く、高出力に耐えられるようになっています。
3. 燃費はどれくらい?驚きの「給油量」
巨大なボーイング747(ジャンボジェット)を例に出すと、その燃料タンクの容量は約20万リットル以上。これは25メートルプールを半分以上満たす量に匹敵します。
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東京ーロンドン間を飛ぶと、約15万リットルの燃料を消費します。
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燃費に換算すると、1km走るのにおよそ12リットルの燃料を使っている計算です。
こう聞くと「燃費が悪い!」と感じるかもしれませんが、一度に300〜400人を運ぶことを考えると、1人あたりの燃費は意外にもリッターあたり30〜40km程度となり、実は自動車で1人移動するよりも効率が良い場合があるのです。
4. 空の脱炭素革命:次世代燃料「SAF」とは?
現在、航空業界が直面している最大の課題が「脱炭素」です。飛行機は排出する二酸化炭素(CO2)が多いため、従来の石油由来の燃料に代わる**「SAF(サフ)」**が注目されています。
SAF(Sustainable Aviation Fuel)とは?
日本語で「持続可能な航空燃料」と呼ばれます。原料は驚きのものばかりです。
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廃食油: 家庭やレストランで使い終わった揚げ油。
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藻類: 光合成で育つミドリムシなど。
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都市ゴミ: 捨てられるはずの生ゴミや木くず。
SAFの最大の特徴は、従来の燃料と混ぜてそのまま今のエンジンに使えること。これにより、CO2排出量を実質的に最大80%削減できると言われています。すでに一部の路線ではSAFを使ったフライトが始まっており、空の旅は今、大きな転換期を迎えています。
5. まとめ:燃料を知れば、空がもっと楽しくなる
次に飛行機に乗るとき、翼の下を見つめてみてください。そこには巨大な燃料タンクがあり、過酷な環境に耐えるための知恵が詰まった「黄金の液体」が眠っています。
安全のために灯油に近い性質を選び、環境のために廃油から燃料を作る。飛行機の燃料の進化は、人類の技術と環境への配慮の歴史そのものです。



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