広島の冬の味覚を代表するカキですが、その養殖には約450年以上もの長い歴史があると言われています。
1. 養殖の始まり(室町時代末期)
広島湾でカキの養殖が始まったのは、天文年間(1532年〜1555年)頃だという説が有力です。
それまでは自然に岩場についているカキを採るだけでしたが、安芸国(今の広島県)の沿岸で、**石を並べてカキを付着させる方法(石式養殖)**が考案されました。これが広島における「養殖」のルーツと言われています。
2. なぜ広島で発展したのか?
広島湾がカキ養殖の聖地となったのには、この土地ならではの理由があります。
- 豊かな栄養分: 太田川から流れ込む真水が、カキの餌となるプランクトンを豊富に育てます。
- 穏やかな海: 瀬戸内海の島々が防波堤の役割を果たし、波が静かでカキが育ちやすい環境でした。
- 潮の満ち引き: 潮位の差が大きいため、カキを適度に海水から出すことで、身が締まって美味しくなると考えられていました。
3. 「カキ船」と大阪への進出
江戸時代に入ると、広島のカキはさらに有名になります。広島の商人が**「カキ船」**と呼ばれる船にカキを積み込み、大阪などの大都市へ運んで直接販売するようになりました。
大阪の川沿いに船を浮かべ、その場でカキ料理を振る舞うスタイルは大流行し、広島カキの名声を全国に広める大きなきっかけとなりました。
4. 養殖技術の進化
明治から昭和にかけて、技術はさらに進化しました。
- ひび建て養殖: 竹や木を立ててカキを付着させる方法。
- 垂下式(すいかしき)養殖: 昭和に入って普及した、海面に浮かべた筏(いかだ)からカキを吊るす方法。
この「垂下式」の導入により、カキが一年中海の中でプランクトンを食べられるようになり、今のふっくらと大きな広島カキが完成しました。
自然の恵みを最大限に活かそうとした先人たちの知恵が、今の美味しいカキを支えているのですね。


