古都の面影と近代的な活気が交錯する広島。平和記念公園の静寂、路面電車のノスタルジー、そして瀬戸内海の穏やかな景色…そんな表向きの顔とは裏腹に、この街の深層には、人々の間でひそやかに語り継がれる奇妙な物語、すなわち都市伝説が息づいています。今回は、広島にまつわるいくつかのゾッとするような、あるいは不可思議な都市伝説の深淵を覗いてみましょう。
原爆ドームに響く少女の歌声
言わずと知れた広島のシンボル、原爆ドーム。その痛ましい歴史を今に伝えるこの場所は、昼間は多くの観光客が訪れ、平和への祈りを捧げる静謐な空間です。しかし、夜になるとその様相は一変すると言われています。
特に慰霊碑に灯がともる頃、どこからともなく少女の歌声が聞こえてくるというのです。それは、原爆の犠牲となった幼い子供たちが歌っていた子守唄だとか、助けを求める悲痛な叫びだとか…。風の音とも、近くの川のせせらぎともつかないその声は、聞く者の心に深く突き刺さり、決して忘れられない恐怖を刻み込むと言われています。中には、その歌声を聞いた後、体調を崩したり、不幸な出来事が続いたという体験談も囁かれています。
広電最終便の幽霊運転士
広島の足として長年市民に親しまれてきた路面電車、通称「広電」。その最終便には、決して出会ってはならない幽霊運転士がいるという都市伝説があります。
深夜、人気のない停留所にひっそりと現れる最終電車。乗り込むと、運転席には顔色の蒼い、どこか物憂げな様子の運転士が座っています。しかし、その運転士は一切言葉を発せず、ただ黙々と電車を走らせるだけ。車内は異様な静けさに包まれ、窓の外の景色もどこか歪んで見えると言います。
最も恐ろしいのは、この電車が本来の終点とは異なる、誰も知らない場所へと向かうという点です。そこで何が起こるのかは定かではありませんが、二度と戻って来られなくなったという噂も…。深夜に広電を利用する際は、最終便の時刻をしっかりと確認することが肝要かもしれません。
広島城の呪われた甲冑
広島の歴史を語る上で欠かせない広島城。美しい白亜の天守閣は、多くの観光客を魅了しますが、その内部には、持ち主を不幸にするという呪われた甲冑が保管されているという噂があります。
その甲冑は、かつてこの城で命を落とした武士が身につけていたものだと言われています。展示室にひっそりと佇むその甲冑は、夜になるとカタカタと音を立てたり、誰もいないはずなのに人の気配が感じられたりするというのです。
過去には、この甲冑に興味本位で触れた者が、その後不慮の事故に見舞われたという話も囁かれています。広島城を訪れる際は、その美しい外観だけでなく、ひっそりと語り継がれる呪いの噂にも耳を傾けてみるのも良いかもしれません。
瀬戸内海に現れる謎の光
穏やかな瀬戸内海にも、奇妙な都市伝説が存在します。夜、海上を航行する船乗りたちの間で語り継がれるのは、突如として現れる謎の光です。
それは、まるで水中から湧き上がるように現れ、しばらくすると消えてしまう不思議な光。漁火にしては不自然な動きをし、船舶の灯りとも違う、青白い光を放つと言われています。
この光の正体については様々な憶測が飛び交っており、沈没した船の魂だとか、未確認飛行物体だとか…。中には、その光を見た船は必ず海難事故に遭うという不吉な言い伝えも存在します。夜の瀬戸内海を航行する際は、くれぐれもこの謎の光に注意が必要かもしれません。
広島の地下に眠る秘密
広島の街の地下には、語られていない秘密が眠っているという噂があります。それは、原爆投下以前の古い街並みがそのまま残っている地下都市だとか、秘密裏に建設された軍事施設だとか…。
これらの噂は、地下工事の際に偶然発見された謎の空間や、古くから伝わる言い伝えなどが根拠となっているようです。実際にその存在を目撃したという者はほとんどいませんが、もし本当に地下に秘密の空間が存在するならば、そこには一体何が眠っているのでしょうか?想像力を掻き立てられる、ロマンと恐怖が入り混じった都市伝説です。