広島・大久野島、うさぎの楽園を訪ねて
穏やかな瀬戸内海に浮かぶ小さな島、大久野島。ここは、数えきれないほどのうさぎたちが暮らす、通称「うさぎ島」として知られています。広島県竹原市忠海港からフェリーでわずか15分。島に一歩足を踏み入れると、そこはまさに別世界。今回は、この特別な島が持つ歴史と、愛らしいうさぎたちとの触れ合いについて語ります。
毒ガスの島から、うさぎの島へ
大久野島は、ただの観光地ではありません。その歴史は非常に重く、太平洋戦争中は旧日本軍の毒ガス製造拠点でした。地図からも消され、「毒ガス島」として極秘裏に存在していました。戦争が終わり、施設は解体されましたが、その歴史の傷跡は今も島のあちこちに残っています。毒ガスの貯蔵庫跡や発電所跡など、当時の建物がひっそりと佇む光景は、訪れる人々に戦争の悲惨さを静かに語りかけます。
そんな歴史を持つ島が、なぜうさぎの楽園になったのでしょうか?その起源には諸説ありますが、戦後、島の小学校で飼われていた数羽のうさぎが、研究目的で持ち込まれたうさぎが、そしてペットとして飼われていたうさぎが野生化した、などと伝えられています。いずれにせよ、天敵がいないこの島でうさぎたちは繁殖を続け、今では1,000羽以上が生息していると言われています。島の暗い歴史を知る者にとって、平和の象徴であるうさぎたちが自由に駆け回る姿は、何よりも感動的な光景です。
うさぎたちとの出会い方と注意点
島に到着すると、すぐにうさぎたちが出迎えてくれます。彼らは人に慣れており、こちらから近づかなくても、エサを持っていると分かると自ら寄ってきます。その人懐っこさに、誰もが心を奪われることでしょう。
うさぎたちと触れ合うためのポイント:
- エサは持ち込みがおすすめ 島内の休暇村でもエサは販売されていますが、数が少ないため事前に用意していくのがおすすめです。人参やキャベツなど、うさぎが好む野菜を持っていきましょう。袋の音を聞きつけると、たくさんのうさぎが駆け寄ってきます。
- しゃがんで目線を合わせる 立ったままだと、うさぎは警戒してしまいます。ゆっくりとしゃがみ、目線を合わせることで、より安心して近づいてくれます。
- 追いかけない、抱き上げない うさぎはとても臆病な動物です。無理に追いかけたり、抱き上げたりすると大きなストレスを与えてしまいます。写真を撮るときも、そっと見守る姿勢でいましょう。
- エサやり場所を選ぶ たくさんのうさぎが密集している場所でエサを与えると、うさぎ同士の喧嘩の原因になることがあります。少し離れた場所で、一羽ずつ丁寧に与えてあげましょう。
島の楽しみ方:サイクリングと歴史探訪
大久野島はうさぎだけではありません。島全体を歩いて回ることもできますが、おすすめはレンタサイクルです。島内には1周約4.3kmのサイクリングロードがあり、海風を感じながら美しい景色を楽しめます。サイクリングの途中には、展望台や海水浴場、毒ガス資料館など、様々なスポットがあります。
毒ガス資料館は、島の歴史を深く知る上で欠かせない場所です。ここには、当時の毒ガス製造の様子や、被害を受けた人々の記録などが展示されています。平和なうさぎの姿との対比は、見る者の心を強く揺さぶるでしょう。
休暇村大久野島は、宿泊施設やレストラン、温泉も完備しており、島での滞在をより快適にしてくれます。日帰りも良いですが、夜の静かな島で星空を眺めるのも、また格別な体験です。
大久野島が教えてくれること
大久野島は、負の遺産と愛らしい命が共存する、世界でも珍しい場所です。私たちはこの島を訪れることで、戦争の悲惨さを学び、平和の尊さを改めて感じることができます。そして、純粋で無垢なうさぎたちの姿に触れることで、日々の忙しさから解放され、心が癒されることでしょう。
もし、日々の生活に疲れたり、何か大切なものを見失いそうになったりしたら、この島を訪れてみてください。たくさんのうさぎたちが、そっとあなたの心に寄り添ってくれるはずです。そして、平和への願いを胸に、彼らとの時間をゆっくりと楽しんでください。


