南極基地の研究テーマ:アイスコア、オゾン層、隕石で探る地球の過去と未来

コラム


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🔬 南極基地での主要な研究テーマ

1. 氷床・雪氷学 (過去の地球環境の解明)

南極の研究で最も重要なテーマの一つです。雪が降り積もり、圧縮されてできた分厚い氷床は、大昔の地球の情報を閉じ込めています。

  • アイスコア掘削: 数千メートルもの深さの氷柱(アイスコア)を掘り出し、分析します。

    • 氷の中に閉じ込められた過去の空気の泡から、大昔の二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスの濃度を直接測定し、過去の気候変動の歴史を解明します。

    • 日本隊は、72万年前に遡る最古級のアイスコア採取に成功しています。

  • 氷床変動の観測: 氷床の厚さや流動速度、融解の状況を測定し、地球温暖化による海面水位の上昇予測に役立てます。

2. 気象・宙空科学 (宇宙と大気の研究)

南極はオーロラなどの宇宙圏現象が多く見られる地域であり、「宇宙に開いた窓」とも呼ばれます。

  • オゾン層・オゾンホール: 気象庁なども参加し、オゾンゾンデなどを用いてオゾン層の破壊(オゾンホール)の状況を継続的に観測しています。

  • オーロラ観測: オーロラの発生メカニズムや、太陽から飛来する粒子が地球大気や気候に与える影響を解明します。

  • 大型大気レーダー (PANSY): 昭和基地の大型レーダーなどを使い、南極上空の大気の流れや乱れ(乱流)を観測し、地球規模の気象システムの理解を深めます。

3. 地学・隕石 (地球と太陽系の起源)

  • 南極隕石の採集: 南極大陸は隕石が多く発見される特異な場所です。氷床の動きにより隕石が地表に露出するためで、日本は世界一の隕石保有数を誇ります。

    • これらの隕石は、太陽系が形成された約46億年前の状態を保っており、地球や太陽系の起源を探る重要な手がかりとなります。

  • 地質・地形: 南極大陸の地殻の形成や、大陸移動の歴史(超大陸ゴンドワナの時代など)を探る調査が行われています。

4. 生物学・海洋生態系

極寒の環境に適応した生物や、手つかずの海洋生態系を調査します。

  • 海洋生物: ナンキョクオキアミ(南極の食物連鎖の鍵)、ペンギン、アザラシなどの行動や個体数の変動を長期的に観測し、海洋環境の変化を調べます。

  • 極限環境微生物: 氷床下や岩石の表面など、非常に厳しい環境に生息する微生物(地衣類、細菌類)を調査し、生命の多様性や、医療や工業への応用可能性を探ります。

  • 氷底湖の研究: ロシアのボストーク基地の直下にあるボストーク湖のように、厚い氷の下に数百万年以上隔離されてきた湖に存在する未知の生命体の探査と研究が進められています。


南極での研究は、地球全体、さらには宇宙の成り立ちというスケールの大きな課題を解明するための、国際的な取り組みとなっています。

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