2026年の美容シーンを象徴するキーワード、それは「うさぎ舌(うさぎした)リップ」です。
かつての赤リップブームやマットリップの流行を経て、今、女子中高生を中心に熱狂的な支持を集めているこのトレンド。単なる流行色を超え、なぜこれほどまでに彼女たちの心を掴んで離さないのか。その現象の裏側にある「めろい」美学を、1,500文字のボリュームで深く掘り下げます。
2026年、美の基準は「強さ」から「儚さ」へ:うさぎ舌リップが変えたもの
今、SNSのタイムラインを埋め尽くしているのは、まるで赤ちゃんの唇のような、淡く、青みを帯びた、ちゅるちゅるのピンク。それが「うさぎ舌リップ」です。もともとは中国のSNS「小紅書(RED)」から火がつき、韓国のアイドルたちが取り入れたことで一気にアジア全域へと広がりました。
しかし、なぜ2026年の今、このスタイルが「最強」とされるのでしょうか。そこには、デジタルネイティブ世代特有の感性と、新しい「あざとさ」の定義が隠されています。

1. 「粘膜色」の究極形としての「うさぎ舌」
数年前からパティスリー界隈でも「素材本来の良さ」が重視されるようになったのと同様に、メイクでも「作り込まない美しさ」が求められるようになりました。その流れで誕生したのが、自分の唇の内側の色に近い「粘膜リップ」です。
「うさぎ舌リップ」は、その粘膜色をさらに極限までピュアに、そして「儚げ」に進化させたものです。うさぎが毛繕いをしたときに見える、あの小さくて柔らかい舌のようなベビーピンク。それは、生命力がありながらもどこか無防備で、見る人の保護欲をかき立てます。
これまでの「強い女」を演出するはっきりした色味とは対照的に、あえて「弱さ」や「幼さ」を味方につける。この絶妙な引き算の美学が、今の女子中高生の価値観にフィットしたのです。
2. 「ちゅるん」という質感への執着
うさぎ舌リップを語る上で欠かせないのが、その圧倒的な「ツヤ」です。彼女たちはこれを「ちゅるん系」と呼びます。
2026年のトレンドは、単なるグロスのテカリではありません。唇の表面に一枚の薄い水の膜を張ったような、奥行きのある透明感です。この質感を出すために、ティントで色を定着させた後、さらにプランパーや透明なオイルグロスを重ねる「多層塗り」が鉄則となっています。
この「ちゅるん」とした質感は、スマホの画面越しでも非常に映えます。特に自然光の下で動画を撮った際、光を反射してキラキラと輝く唇は、まさに「めろい(メロメロになるほど可愛い)」の頂点。フィルター加工との相性も抜群で、肌の透明感を底上げしてくれる効果もあるのです。
3. スクールライフと「うさぎ舌」の幸福な関係
女子中高生にとって、トレンドとは「学校」という日常の中でどう楽しむかが重要です。うさぎ舌リップがこれほどまでに普及した最大の理由は、その「バレにくさ」にあります。
放課後の原宿や渋谷では、グロスをたっぷり重ねて「盛り」を楽しみますが、教室では一度ティントをティッシュオフして、自前の血色感を偽装する。この「元からこの色です感」が出せる絶妙な青みピンクは、校則という制約の中でも「可愛い」を諦めたくない彼女たちにとって、魔法のアイテムとなりました。
「派手じゃないのに、確実に可愛い」。このバランス感覚こそが、今のJK・JCたちがトレンドを見極める際の大切な基準なのです。
4. 2026年を象徴する「三種の神器」
このトレンドを支えているのは、メーカー各社の技術革新です。
まず筆頭に挙がるのが、rom&nd(ロムアンド)の「グラスティングカラーグロス」。特に「01 ピオニーバレエ」は、うさぎ舌リップの火付け役として伝説的な人気を誇っています。白みを含んだ淡いピンクは、まさにうさぎの舌そのもの。

次に、韓国ブランドhince(ヒンス)の「ロウグロウジェルティント」。これは「透け感」と「色持ち」という、相反する要素を高いレベルで両立させました。

そして、日本のプチプラ界の王者、CEZANNE(セザンヌ)の「リップカラーシールド」。中高生のお小遣いでも買える価格帯でこの質感を再現したことは、トレンドを全世代(全学生)へと広げる決定打となりました。

まとめ:唇から始まる「めろい」物語
うさぎ舌リップは、単なるメイクの手法ではありません。それは、自分自身をいかに「大切に、可愛く見せるか」という、セルフラブの一種とも言えます。
鏡を見るたびに自分の唇が「めろい」状態であること。それは、勉強や人間関係で忙しい彼女たちにとって、小さな、けれど確かな自信を与えてくれるお守りのようなものです。
かつてフランスのパティシエたちが、伝統的なサントノレを現代風にアレンジして人々を驚かせたように、現代の少女たちもまた、自分の唇というキャンバスを使って、伝統的な「ピンク」を全く新しい「うさぎ舌」というアートへと昇華させているのです。


