冬の相棒、ダウンジャケットの「温かさ」の正体
寒さが本格化する季節、軽くて温かいダウンジャケットは手放せない存在ですよね。でも、その中に入っている「ふわふわの羽(ダウン)」がどうやって作られているか、考えたことはありますか?
実は今、世界中で「ダウンの調達方法」が大きな議論を呼んでいます。単なる防寒着の素材の話ではなく、「動物への倫理観」と「消費者の選択」が問われる時代になっているのです。
1. 衝撃の事実「ライブプラッキング」とは?
ダウンの材料となる羽は、主にガチョウ(グース)やアヒル(ダック)から採取されます。ここで大きな問題となっているのが、「ライブプラッキング(生体むしり)」という手法です。
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ライブプラッキングの実態: 生きている鳥を動けないように押さえつけ、手作業で胸の羽をむしり取ります。鳥は恐怖で鳴き叫び、皮膚が裂けることも珍しくありません。裂けた皮膚は、麻酔なしで針と糸で縫い合わされることさえあります。
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なぜそんなことをするのか?: 理由は単純、「効率と利益」です。生きたままむしれば、一羽の鳥から一生のうちに何度も(3〜5回ほど)羽を収穫できるからです。
私たちが「安い!」「軽い!」と喜んで手に取るダウンの裏側に、こうした残酷な工程が隠れている可能性がある。これが、今ファッション業界が直面している最大の課題です。
2. 「フォアグラ」との複雑な関係
もう一つの問題は、食肉やフォアグラ生産との兼ね合いです。 フォアグラを作るために「強制給餌(ガバージュ)」をされた鳥から取れた羽も、市場に流通しています。動物愛護の観点から見れば、強制給餌もまた虐待にあたるとされており、「その副産物である羽を使うことも倫理的にNG」という声が強まっています。
3. 消費者ができること:RDS認証を知っていますか?
こうした悲劇をなくすために、世界的なブランド(パタゴニアやノースフェイスなど)がいち早く導入したのが「RDS(Responsible Down Standard)」という認証制度です。
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RDS認証とは: 「生きたままの採取」や「強制給餌」を厳格に禁止し、ヒナの時から適切に飼育された鳥の羽であることを保証する国際規格です。
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トレーサビリティ: そのダウンがどこの農場で、どのように採取されたのかを追跡できるようになっています。
これからの時代、私たちが選ぶべきは「ただ安いダウン」ではなく、「タグにRDSなどのマークがついた、責任あるダウン」です。
4. 進化する「ヴィーガンダウン」という選択肢
2026年現在、羽毛を一切使わない「テックダウン(人工羽毛)」の進化が止まりません。
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カポック: 植物の種子から取れる繊維。驚くほど軽く、動物を傷つけません。
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リサイクルダウン: 古くなった布団やジャケットから羽毛を取り出し、洗浄・精製して再利用するもの。新しい羽をむしる必要がなく、究極のエコと言えます。
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高機能ポリエステル: プリマロフトなどに代表される、水に強く、ダウンと同等の保温性を持つ人工素材。
「羽がないと寒い」というのは、もう昔の話。テクノロジーによって、私たちは「誰も傷つかない温かさ」を手に入れることができるようになりました。
まとめ:その1着に「心」はこもっていますか?
老後の資産運用も大切ですが、私たちが日々身にまとうものに「どんな背景があるのか」を知ることも、豊かな人生を送るための大切なエッセンスです。
「安いから」という理由だけで選んだ1着が、どこかの空の下で鳥たちの叫び声の上に成り立っているとしたら……それは少し、悲しいことですよね。
次にダウンを買い換えるときは、ぜひタグの裏側を見てみてください。あなたのその選択が、世界から残酷な慣習を一つ減らす力になります。


