「非アルコール性脂肪肝」について。これは、**非アルコール性脂肪性肝疾患(Non-Alcoholic Fatty Liver Disease: NAFLD)**とも呼ばれ、アルコールの飲み過ぎ以外の原因で肝臓に脂肪がたまる病気です。
近年、肥満や生活習慣病の増加に伴い、日本を含め世界的に患者数が増加しており、注目されています。
1. どんな病気か(NAFLDとNASH)
NAFLDは、その進行度によって主に2種類に分類されます。
NAFLDの多くはNAFLですが、NASHに進行すると重篤な肝疾患につながるため、早期の対策が重要です。
2. 主な原因
主にメタボリックシンドロームに関連しています。
- 肥満(特に内臓脂肪型肥満)
- 糖尿病(2型糖尿病)
- 脂質異常症(高脂血症)
- 高血圧
- 過食(特に高カロリー、高脂肪、高糖質の食事)
- 運動不足
インスリンの働きが悪くなること(インスリン抵抗性)などが、肝臓に中性脂肪をため込み、炎症を引き起こす主なメカニズムと考えられています。
3. 症状
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、NAFLD/NASHの初期にはほとんど自覚症状がありません。
多くは健康診断の血液検査(AST、ALTなどの肝機能数値異常)や腹部超音波検査で発見されます。
病気が進行して肝硬変などに至ると、倦怠感、食欲不振、腹部の張り(腹水)、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、むくみなどの症状が現れます。
4. 治療(生活習慣の改善が基本)
NAFLD/NASHの治療の基本は、生活習慣の改善です。現在のところ、NAFLD/NASHに特化して保険承認されている治療薬は日本国内では限られています。
① 食事療法
- 総摂取カロリーの制限:食べ過ぎに注意し、適正なカロリー量を守ります。
- 栄養バランス:主食・主菜・副菜を揃え、バランスの取れた食事を心がけます。
- 高脂肪・高糖質の制限:
- 揚げ物や脂質の多い食品を減らします。
- 甘い飲み物(ジュース、清涼飲料水)や果糖の摂りすぎに注意します。
- 良質なたんぱく質や食物繊維(野菜、きのこ、海藻)を積極的に摂取します。
- 食べる順番:野菜や汁物から先に食べ始めると、食後の急激な血糖値の上昇を抑え、食べ過ぎ防止にもつながります。
② 運動療法
- 有酸素運動:ウォーキング、ジョギング、水泳など。週に3〜4回、1日30分以上の運動が推奨されます。
- 筋力トレーニング:有酸素運動と組み合わせることで、基礎代謝が上がり、脂肪燃焼効果が高まります。
③ 体重減少の目標
特に肥満を合併している場合、体重を7%以上減少させることがNASHの炎症を改善させるために重要とされています。
④ 薬物療法
合併している糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の治療薬の中で、肝臓の状態改善にも効果が期待されるものが選択されることがあります。
肝機能の異常を指摘された場合は、必ず医療機関を受診し、専門医の指導のもとで適切な対策を行いましょう。