黒人の肌が黒いのは、主にメラニン色素の量と種類が多いためです。
これは、人類が進化する過程で、強い日差し(紫外線)から体を守るために獲得した適応の結果です。
1. メラニン色素の役割と種類
メラニン色素とは
メラニン色素は、皮膚の基底層にあるメラノサイトという細胞で作られる色素です。この色素の主な役割は、紫外線(UV)から皮膚細胞のDNAを守ることです。メラニンは紫外線を吸収し、熱に変えて放散することで、皮膚の損傷を防ぐ「天然の日焼け止め」の働きをしています。
メラニンの種類と肌の色
メラニンには主に2種類あります。
- ユーメラニン(Eumelanin): 黒色や濃い茶色をしており、肌を黒くする主な原因です。紫外線防御能力が非常に高いのが特徴です。
- フェオメラニン(Pheomelanin): 黄色や赤色をしており、金髪や赤毛、色白の人に多く見られます。紫外線防御能力はユーメラニンに比べて低いです。
黒人の肌は、このユーメラニンを大量に生成しているため、濃い黒色に見えます。
2. 進化と環境への適応
黒人の祖先は、人類発祥の地とされるアフリカの赤道付近に住んでいました。この地域は一年中日差しが非常に強く、紫外線レベルが高い環境です。
- 強い紫外線は、皮膚の細胞やDNAに深刻なダメージを与え、皮膚がんのリスクを高めます。
- この過酷な環境下で生存し、子孫を残すためには、紫外線から体を守る能力が必須でした。
進化のメカニズム
ユーメラニンを多く生成する体質を持つ人々が、紫外線による健康被害を受けにくく、生存に有利となりました。結果として、この「濃い肌の色」を持つ形質が自然選択によって世代を超えて受け継がれ、アフリカを起源とする人々は、黒い肌の色を持つようになったのです。これは、環境に適応した生物学的な防御メカニズムです。
逆に、日差しが弱い高緯度の地域に移住した人々は、ビタミンD生成のために紫外線を取り込む必要があったため、メラニン色素の少ない(肌の白い)形質が有利となり、そちらが進化的に選択されました。