致死性不整脈(ちしせいふせいみゃく)とは、短時間で意識を失ったり、突然死を引き起こしたりする危険性の高い不整脈のことを指します。
主な種類と症状、治療法は以下の通りです。
1. 主な種類
心臓のポンプ機能が著しく低下し、全身に血液を送り出せなくなるため、特に生命に関わるのは頻脈性不整脈です。
- 心室細動(VF: Ventricular Fibrillation)
- 心室が無秩序に非常に速く収縮(けいれん)し、ポンプ機能を完全に失った状態です。
- 数秒以内に意識を失い、直ちに治療しなければ死に至る、最も危険な不整脈です。
- 心臓突然死の約8〜9割はこれが原因とされています。
- 心室頻拍(VT: Ventricular Tachycardia)
- 心室から発生した異常な電気刺激により、拍動が非常に速くなる(通常1分間に200回以上)不整脈です。
- 持続すると心臓がポンプの役割を十分に果たせなくなり、失神や心停止に至ることがあります。心室細動に移行することもあります。
また、徐脈性不整脈の中でも、極端な脈の遅さや心停止を伴う房室ブロック(3度房室ブロック)や洞不全症候群の一部も、失神や突然死のリスクがあるため、致死性または準致死性とされます。
2. 症状
致死性不整脈が発生すると、心臓が血液を全身に送れなくなるため、以下のような症状が起こります。
- 意識消失(失神)
- めまい、ふらつき
- 動悸(心臓がバクバクする感じ)
- 胸痛、息切れ(持続性心室頻拍などの場合)
特に心室細動では、ほとんどの場合、助けを求める前に意識を失ってしまいます。
3. 治療法
致死性不整脈は緊急性が高いため、迅速な対応が必要です。
- 電気的除細動(特に心室細動に対して)
- 体外式除細動器(AEDなど)や植込み型除細動器(ICD)で電気ショックを与え、心臓の異常な電気活動を停止させ、正常なリズムに戻します。
- 心室細動に対しては、救命のためにただちに行う必要があります。
- 植込み型除細動器(ICD: Implantable Cardioverter Defibrillator)
- 突然死の危険性が高いと判断された患者さんの胸などに植込み、異常な速い脈を感知すると自動的に電気ショックを与えて心臓突然死を回避する装置です。
- カテーテルアブレーション治療
- 足の付け根などからカテーテルを心臓に入れ、不整脈の原因となっている異常な電気信号の発生源や伝導路を特定し、高周波などで焼き切る(または冷凍・パルスフィールドで変性させる)根治療法です。持続性の心室頻拍などに対して行われます。
- 薬物治療
- 抗不整脈薬(例:アミオダロンなど)を用いて、不整脈の発生を抑えます。