薬の材料となっている生物:天然物由来の医薬品と抗生物質の歴史

コラム


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💊 薬の材料となる主要な生物たち

1. 微生物(カビ、放線菌、細菌など)

微生物は、自分たちの生存競争のために他の菌を攻撃する物質を生産します。これが抗生物質の発見につながり、医薬品開発に革命をもたらしました。

分類 代表的な物質・薬 薬の用途
青カビ (ペニシリウム) ペニシリン 世界初の抗生物質(細菌感染症の治療)
放線菌 ストレプトマイシン 結核薬、抗生物質
スタチン系薬 高脂血症治療薬(コレステロール低下薬)の多くが微生物由来の化合物を元にしている
タクロリムス 強力な免疫抑制剤(臓器移植時の拒絶反応抑制など)

2. 植物(高等植物、樹木など)

植物は、漢方薬や民間薬の原料である生薬の主要な供給源であり、現代の西洋薬の原料としても重要です。

分類 代表的な物質・薬 薬の用途
ケシ モルヒネ 鎮痛剤、麻酔薬
イチイ タキソール(パクリタキセル) 抗がん剤(卵巣がん、乳がんなど)
キナの樹皮 キニーネ マラリア治療薬
ジギタリス ジギトキシン 強心剤(心不全の治療)※使い方次第で毒にも薬にもなる
マオウ エフェドリン 気管支拡張薬(漢方薬の原料としても利用)
ガマ(蒲) ガマの穂(蒲黄) 止血剤(生薬)

3. 動物(陸生動物、海洋生物)

動物由来の物質は、伝統薬(生薬)として古くから利用されており、特に漢方薬では、動物の角、内臓、分泌物などが用いられます。

分類 代表的な物質・薬 薬の用途
熊胆(ゆうたん) 消化器系の薬。主成分(ウルソデオキシコール酸)は現在化学合成で製造される。
鹿 鹿茸(ろくじょう) 強壮、強精、鎮痛薬(オスの幼角)
ジャコウジカ 麝香(じゃこう) 強心、鎮静薬(生薬、現在はほぼ合成品)
紅藻類(マクリ/海人草) カイニン酸 駆虫薬(特に回虫)として使用されていた
イモガイ コノトキシン 猛毒の成分を元に、強力な鎮痛剤の開発が進められている

4. 海洋生物(海綿、ホヤなど)

海洋は多様な生物の宝庫であり、特に深海生物やサンゴ礁の生物から、新しい医薬品のシーズ(種)となるユニークな化合物が次々と発見されています。

  • 海綿やホヤなどの海洋無脊椎動物や、それらに共生する海洋由来の真菌から、抗がん作用や抗菌作用を持つ物質が探索されています。


これらの天然化合物は、そのまま医薬品となるだけでなく、その複雑な構造をヒントにして、より薬効を高めたり、副作用を減らしたりするために**化学的な改良(誘導体化や合成)**が加えられ、新薬として開発されています。

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