「住宅過剰社会」とは、単に家が余っている状態を指すだけでなく、「世帯数を上回る住宅があるにもかかわらず、さらに新築が造られ続け、一方で空き家が放置されていく」という日本の歪んだ社会構造を指す言葉です。
2026年現在、この問題は単なる「統計上の数字」から、私たちの生活を脅かす「現実の危機」へと変化しています。
その主な実態を4つのポイントで解説します。
1. 「空き家」が街の質を破壊する
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現在、全国の空き家率は過去最高の13.8%(約900万戸)に達し、さらに2030年には30%に及ぶとの予測もあります。
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負動産の連鎖: 相続したものの売れない・貸せない「負動産」が急増。管理されない空き家は放火、不法投棄、倒壊のリスクを招き、周囲の地価まで下げてしまいます。
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行政コストの増大: 人口がまばらな地域(スポンジ化)でも、道路や水道、ゴミ収集などのインフラを維持しなければならず、自治体の財政を圧迫しています。
2. 「家余り」なのに「家が高くて買えない」矛盾

住宅総数は余っているはずなのに、都市部(特に東京圏)ではマンション価格が高騰し続けています。
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二極化の進行: 利便性の高い都心の物件は「投資対象」や「富裕層の資産」となり、一般家庭の手が届かない価格(都心マンション平均1億円超など)になっています。
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質の低いストック: 余っている住宅の多くは、現代の耐震・断熱基準を満たしていない中古物件や、不便な立地の空き家であり、住みたい人のニーズとマッチしていません。
3. 「新築至上主義」の副作用

日本の住宅政策や税制は、長らく「新築を建てること」を景気対策として優遇してきました。
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焼畑的な開発: 郊外の農地や樹林地を潰して新しい分譲地を作る一方で、古い街並みは空き家だらけになるという、非効率な新陳代謝が続いています。
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将来世代へのツケ: 今建てている新築も、数十年後には膨大な維持管理コストが必要な「余剰在庫」になるリスクを抱えています。
4. 2026年以降の法的・制度的変化

こうした状況を受け、国もようやく「新築から中古活用へ」と舵を切っています。
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空家対策特措法の強化: 管理不全の空き家は、固定資産税の減税対象から外されるなど、所有者の責任が厳しく問われるようになっています。
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省エネ基準の義務化: 2026年以降、新築には高い省エネ性能が求められ、既存の「質の低い家」との価値の差がさらに広がる(資産価値の暴落)と予想されます。
空き家問題の未来について
「住宅過剰社会」という厳しい現実に立ち向かうため、空き家対策は
「個人の努力」→「テクノロジー」と制度による強制的な解決へと大きくフェーズが変わろうとしています。
2026年現在、注目されている「空き家対策の未来」を、3つの視点から整理して解説します。
1. テクノロジーによる「早期発見とマッチング」
これまで空き家は「外から見ても空いているか分からない」ことが放置の大きな原因でした。
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AIと衛星画像の活用: 宇宙航空研究開発機構(JAXA)発の技術などを使い、人工衛星から屋根のサビや庭の植生の荒れをAIで解析。自治体が調査員を送る前に、空き家を自動で特定・リスト化するシステムが普及し始めています。
例「人工衛星で空き家を探せ AI活用不動産新サービス」
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ライフラインデータとの連携: 電気・水道の使用量をAIで分析し、「人が住んでいない可能性が高い家」をリアルタイムで把握。放置が深刻化する前に所有者へアプローチする試みが、一部の自治体で無償開放されています。
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「1円不動産」や「リノベ民泊」のプラットフォーム: 「負動産」を処分したい所有者と、安く手に入れてDIYを楽しみたい若者や投資家を繋ぐマッチングサイトが拡大。AIが改修費用と将来の収益性を瞬時にシミュレーションするツールも登場しています。
2. 「放置できない」仕組みへの法的強制力
「持っているだけで税金が安い」という状況が終わり、所有者の責任が重くなります。
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空き家税(非居住住宅利活用促進税): 京都市が2026年にも導入を予定している新税です。空き家を所有しているだけで課税されるため、「放置するよりは売る・貸す」というインセンティブを強力に働かせます。
例「京都市情報館」https://www.city.kyoto.lg.jp/gyozai/page/0000296672.html
- 管理不全空家の増税: 改正空家特措法により、適切に管理されていない家は「管理不全空家」に指定されます。これにより、住宅用地の特例(固定資産税の6倍軽減)が解除され、実質的に税金が最大6倍に跳ね上がるリスクが現実のものとなります。
3. 社会構造の転換(リノベーション・サーキュラーエコノミー)
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「壊して建てる」から「直して使い続ける」循環型社会への移行です。
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性能向上リノベーションの義務化: 2026年以降、省エネ基準を満たさない家の価値はさらに下落します。そのため、断熱や耐震を最新レベルに引き上げるリフォームへの補助金が手厚くなり、古い家を「宝の山」に変えるビジネスが主流になります。
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多拠点居住(アドレスホッパー)のインフラ: 空き家をサブスクリプション型で利用できるサービスが広がり、都市部の若者が地方の空き家を「第2の拠点」として共同管理するライフスタイルが定着していきます。
| フェーズ | これまで | これから(2026年〜) |
| 発見 | 近隣からの苦情待ち | AI・衛星による自動検知 |
| 税金 | 住宅なら一律で安い | 空き家税、放置による増税 |
| 価値 | 古くなればゼロ | リノベで性能を高めて再販・運用 |
| 処分 | 相続して放置 | 自治体への寄附や「1円」譲渡 |
広島での住宅過剰社会の現実と空き家対策の未来
1. 広島の「家余り」の現実(統計データ)
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空き家率は全国平均以上: 広島県の空き家数は約23.1万戸で、空き家率は15.8%(2023年調査)。これは全国平均(13.8%)を大きく上回り、約6戸に1戸が空き家という計算です。
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広島市内でも増加: 比較的需要が高い広島市であっても、東区や安佐北区など、かつてのマンモス団地を抱えるエリアで空き家が急増しています。
2. 「広島特有」の歪み:二極化の加速
広島は今、非常に矛盾した状態にあります。
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都心マンションの「億ション」化: 中区や駅周辺の再開発エリアでは、新築マンションの平均価格が6,000万円を超え、中には1億円を突破する物件も。資材高騰と人手不足により、「余っているはずなのに、買える家がない」状況です。
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郊外団地の「スポンジ化」: 昭和の時代に山を切り拓いて造られた団地(安佐北区や佐伯区の一部など)では、高齢化が進み、家が歯抜け状に空いていく「スポンジ化」(人口減少と少子高齢化により、団地内の空き家や空き地が、スポンジに穴が開くように点在して増え、都市の密度が低下し、スカスカになってしまう現象)が止まりません。
広島で進む「未来の空き家対策」
広島は全国的にもデジタルや新発想を取り入れた対策が盛んな地域です。
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VR内見による空き家バンク(広島県全域): わざわざ現地に行かなくても、スマホやVRで空き家の中を360度確認できるシステムを県が導入。遠方からの移住希望者とのマッチングを加速させています。
例「ひろしま空き家バン」

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江田島市などの成功事例: 空き家を単なる「住居」としてだけでなく、コワーキングスペースやカフェを併設した「複合施設」へ再生し、地域おこし協力隊と連携して若者を呼び込む動きが活発です。
例「Kirikushi Coastal Village」
https://www.setouchi.travel/jp/see-and-do/spot/4G666ZhHjcIAiVRay6Cgxp/
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広島市「空家等対策計画」の強化: 2026年に向け、管理不全な空き家への立ち入り調査や、固定資産税の優遇解除(増税)をより厳格に運用する体制が整っています。
| エリア | 2026年の現実 | 今後のリスク・対策 |
| 広島市内中心部 | 地価・マンション価格が高止まり | 高値掴みに注意。ただし資産価値は落ちにくい。 |
| 市内近郊の団地 | 空き家が目立ち始めている | 相続時に「売れない」リスク大。早めの処分やリノベが必要。 |
| 中山間地域・島しょ部 | 急激な人口減 | 普通に売るのは困難。自治体の空き家バンクや活用支援をフル活用。 |
まとめ
住宅過剰社会の現実 ・空き家率の急増:全国で900万戸を超え、放置すれば固定資産税が最大6倍になるペナルティも。 ・価格の二極化:家は余っているのに、広島市内中心部は高騰し「億ション」化。 ・スポンジ化:郊外団地がスカスカになり、街の活力が低下する深刻な危機。 ・2026年基準:省エネ性能が低い家は資産価値が暴落するリスク。
■空き家対策の未来 今はAIや衛星画像で放置空き家が特定される時代です。広島でもVR内見の導入や、江田島市で見られるリノベカフェへの再生など、最新テクノロジーとアイデアで「負動産」を価値ある資源に変える動きが活発化しています。
■今すべきこと 実家の管理や売却は、手遅れになる前の決断が重要です。放置は最大のリスクとなります。


