クロマグロ養殖の現状と課題|完全養殖のメリットや撤退が続く理由を解説

コラム

クロマグロの養殖は、かつては「不可能」と言われていましたが、現在では日本の技術が世界をリードする分野となっています。

特に有名なのが、近畿大学が世界で初めて成功させた「完全養殖」です。現在の状況や課題、メリットを整理して解説します。


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1. 養殖の種類:2つのアプローチ

現在行われている養殖には、大きく分けて2つの方法があります。

  • 通常の養殖(蓄養): 天然の稚魚(ヨコワ)を捕まえて、生け簀で大きく育てる方法です。

  • 完全養殖: 人工孵化させた稚魚を親にし、その親が産んだ卵をまた孵化させて育てる「サイクルを完結させた」方法です。天然資源を減らさないため、持続可能な手法として注目されています。

2. クロマグロ養殖のメリット

  • 安定供給と品質の均一化: 天候や漁獲量に左右されず、年間を通して安定した供給が可能です。また、エサの調整により「全身トロ」のような脂ののった個体を狙って育てることができます。

  • 鮮度管理の徹底: 水揚げ直後に適切な処理(活け締めなど)をその場で行えるため、高い鮮度を保ったまま市場に届けられます。

  • 資源保護: 完全養殖が普及すれば、絶滅が危惧される天然マグロの保護につながります。

3. 直面している大きな課題

一方で、最近では「完全養殖からの撤退・縮小」というニュースも出ています(2025年、マルハニチロの生産大幅減など)。その背景には深刻な課題があります。

  • 生存率の低さ: マグロは非常にデリケートです。光や音に驚いて生け簀の網に衝突して死ぬ(衝突死)ことが多く、卵から出荷サイズまで育つ確率は極めて低いです。

  • エサ代の高騰: 1kg太らせるのに15kg以上の生餌(サバやイワシ)が必要で、近年の魚価高騰が経営を圧迫しています。

  • 品質の評価(腹痩せ問題): 人工エサで育つと、天然物や天然稚魚からの養殖に比べて内臓が発達し、可食部(大トロ部分)の見た目やバランスが劣るという市場評価の難しさがあります。


主な養殖拠点(日本国内)

日本の南西部の暖かい海域が中心です。

  • 長崎県: 五島列島や鷹島(国内トップクラスの生産量)

  • 鹿児島県: 奄美大島(マルハニチロなどの拠点)

  • 和歌山県: 串本(近畿大学の研究拠点)

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